マダニに関するニュースが今年も出てきました。正しく知って正しく対策しましょう。
今年もマダニに関するニュースが報道されています。「殺人ダニ」というショッキングなあだ名をつけているニュースもありました。ここ数年、急に話題にのぼるようになった「マダニ」はいったいどんなダニなのでしょうか。
マダニは屋外にいるダニです。いわゆる家にいるチリダニ、コナダニ、イエダニとは分布が異なります。主に森林や草地に生息していたため、今まではあまり人間との接触の機会が無かったのですが、最近の野山でのアウトドアブームや、開発により寄生された野生動物が人里に降りてきたり、また農村人口の高齢化により今までの田畑が荒れ気味になってマダニが住みついたりと、人間の住環境に近いところに生息するようになりました。日本には現在約47種類(国立感染症研究所のHPより)のマダニがいるとされています。
また性質や形状も屋内にいるダニとは全く異なり、かなり特徴があります。マダニは8本脚でクモに近い節足動物です。また肉眼では確認しづらい小ささの他のダニに比べ、大きさは約10倍ほどで通常時でも2~3mmあり肉眼でも見えます。また、マダニの栄養源は動物の血なのですが、吸血時に驚くほど肥大化するのもこのダニの特徴で、パンパンに膨らんで1㎝以上にもなります。
マダニは、哺乳類から排出される二酸化炭素や匂い、体温や体臭に反応して草の上などから生物の上に飛び移ります。そして血を吸うのですが、ツメダニ、イエダニが刺して体液や血を吸うのとは異なり、マダニは噛んで血を吸います。
マダニの口器はハサミ型で、これにより生物の皮膚を切り裂きます。そして口下片と呼ばれるギザギザの歯を刺し入れて宿主となった生物と連結し、皮膚下に形成された血液だまりから血を吸い取ります。その際、セメントのような物質を唾液腺から放出し、それが半日程度で硬化するため、吸血時間が極めて長く、1~2週間程度体から離れなくなり、1mLという大量の血液を吸います。その後唾液からセメント溶解物質を出し、皮膚から離れます。
マダニが恐いと言われているのは、吸血の際に病気を媒介することがあるからです。昨年日本で初めて感染が確認され、衝撃的なニュースとなったSFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスの他にも日本紅斑熱や、Q熱、ライム病、回帰熱、ダニ媒介性ウイルス性脳炎などの感染例があがっています。
いずれも初期の発疹や発熱で、気付いて適切な処置をすれば重症になることは少ないものの、放置しておくと重篤な状態になることもあるため、野山に出かけた後、皮膚への違和感や発疹や発熱などの症状があったら、医師の診断を受けた方が良いようです。
マダニは、山林や草地・荒地に分布しているので、そういった場所に入る際には注意が必要です。また犬や猫などに付着して移動することもあるので、住宅地の公園や庭などにもいることがあるため、特に活発となるマダニ種類の多い4~10月には注意が必要です。
マダニ対策としては、噛まれないことが大事なので、まずは肌の露出を避けることです。長袖長ズボン、なるべく広い面積で足を覆う靴や靴下などで素肌を出さないことです。また噛まれていない状態で服や肌についていることもありますので、野外から帰ってきたら衣服を取り換える、全身シャワーを浴びるなども有効な対策です。また虫よけスプレーが効果があるという説もあります。
でも万一、噛まれてしまったら...慌てず病院(皮膚科)に行き処置してもらうようにしましょう。セメントのような物質でガッチリ皮膚の下に入りこんで噛みついているマダニは取り除くことが難しく、無理に引き抜こうとすると頭部が残ってしまったり、消化管内の病原菌が逆流して媒介感染症にかかる危険が高まってしまったりということもあるそうです。
これからの季節もマダニの性質を知って対策をすれば決して怖くはありません。野山などにおでかけの際は、肌の露出を控えつつアウトドアレジャーをお楽しみください。